カワサキ(KAWASAKI)W650。
クラシックな外観、乗り手を選ばない操作性、鼓動感のある走り。
今回は、僕自身も10数年間愛車として乗り続けているW650について、スペックやエンジンの特徴、インプレッションや燃費などを中心にお話します。
カワサキバイクの歴史で、「W」と言うネーミングモデルのご長寿ぶりは他モデルを圧倒するものがあるのではないでしょうか。1966年に発売された「W1」からしても既に半世紀以上という事になります。
ネーミングの継承やデザインだけではなく、アイコンである「バーチカルツイン」というエンジン形式を現代まで作り続けている事実は、カワサキ社のイズムを感じさせます。
1999年発売後、取り回しやすい車体と扱いやすいエンジンが評価され、年齢性別を問わず人気となりましたが排ガス規制等の問題により2009年を最後に生産終了となってしまいました。
その後は「W800」にその立場を譲ります。ところが「W800」も一時的に生産終了となりましたが2019年3月、いよいよ規制条件をクリアし再販になりますね・・・ブラックアウトしたエンジンや各部品は最近の流行りを感じますが、僕は以前の方向性が好き。ストリート&カフェでなく、オールドスクールなメッキタイプ&現代カスタム風のブラックアウトタイプの2系統で販売すれば良いのに。

さ、まずは諸元から見てみましょう。
【W650 その主要諸元表】
※当時のカタログを大事にとってあります。
※僕が所有している2006年型アップハンドル仕様のスペックです。
メーカー
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カワサキ
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エンジンタイプ
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空冷4ストローク・並列2気筒SOHC4バルブ
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モデル名
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W650
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エンジン始動方式
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セル・キック併用
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タイプ・グレード
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アップハンドル仕様
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最高出力
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48ps(35kw)/6500rpm
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動力方式
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–
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最大トルク
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5.5kg・m(54N・m)/5000rpm
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型式
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EJ650A
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車体重量(乾燥重量)
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195kg
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排気量
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675cc
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車体重量(装備重量)
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211kg
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発売開始年
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2006年
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パワーウエイトレシオ
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4.1kg/PS
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燃料消費率
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37.0 km/L ( 60 km/h走行時)
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全長・全高・全幅
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2180mm × 1140mm × 905mm
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燃料タンク容量
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14.0リットル
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シート高
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–
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航続可能距離
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518.0km(概算値)
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フロントタイヤサイズ
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100/90-19 57H
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燃料供給方式
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キャブレター
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リアタイヤサイズ
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130/80-18 66H
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面白いのは「W650なのに排気量は675cc」という部分。歴代「W」へのオマージュとしてのネーミングらしいです。また、14Lという大きめのタンクを備えている為、実質燃費L/25㎞程度で換算すると満タン350㎞走行可能という事もメリット。
当時はハンドルの高さが違う。「アップハンドル仕様」と「ローハンドル仕様」の2択がありました。僕はクラシカル感が欲しかったので、迷わず「アップハンドル」にしました。乗ってて楽ですし。
※当時のカタログより、アップハンドル

※当時のカタログより、ローハンドル
また、最大出力は当初50ps(37kW)だったんですが、2004年型以降は騒音・排ガス規制の対策として48ps(35kW)へとデチューンされました。僕のは規制後。
あ、念のためにサービスデータも。
【W650 そのサービスデータ】
※僕が所有している2006年型アップハンドル仕様のスペックです。
標準プラグ
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CR8E
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スプロケットサイズ
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ドライブ(前) 15T
ドリブン(後) 37T
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プラグ使用本数
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2本
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チェーンサイズ
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525 / 104リンク
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プラグギャップ
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0.7-0.8mm
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バッテリー型式
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VTX14-BS
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エンジンオイル全量
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3.0L
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ヘッドライト
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12V 60w/55w ライトタイプ:H4
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オイル交換時
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2.5L
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ヘッドライト備考
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12V 60w/55w
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エレメント交換時
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2.8L
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テールライト
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12V 21w/5w S25
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フロントウインカー定格
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12V 15w
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リアウインカー定格
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12V 15w
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ちなみに、発売時価格は¥686,000。僕が購入した金額は乗出し価格で72万円ほどだったと記憶してます。
【W650 そのデザイン】
W650は、よく「ネオ・レトロ」的な表現を使われました。メッキパーツの多用(掃除が大変ですが)と先述のバーチカルツインのエンジンがクラシック感を醸し出し、美しく見えます。よく「所有感を感じられる」と言われる部分ですね。全体のカラーリングやスタイリングはもちろん、エンジン絡めたデザインの美しさはデザイナーさんと当時の開発チーム皆さんのセンスを感じます。
※当時のカタログ、冒頭の見開き。
強いて言えば、エンブレムが「ト●イアンフのパクリ」的で論議を生みました。僕の先輩でト●乗りの方でも一瞬見間違えていました。W800からはデザイン変更されましたね。
【W650 そのエンジン】
※当時カタログより
「バーチカルツイン」というエンジン、「最新技術で鼓動感のあるエンジン」が当初のコンセプトだったらしいです。それを基本に様々な種類のエンジンを検討し「W1から始まったバーチカルツインのエンジン」となったようです。OHVも検討されたようですが「最新技術」というキーワードからSOHCのカムをベベルギアで駆動させる内容が決定。ちなみに、このベベル駆動はW1の外観的特徴でもあるOHVのプッシュロッドの雰囲気を演出する事にもなりました。
また「360°位相クランク」を採用した事もポイント。鼓動感を優先して、フレームや乗り心地に悪影響が出るデメリットを「味」として採用しています。この部分は最新技術で悪影響が出ないように対策があったらしいのですが。
これらの採用により、あえて「メカノイズを含めて聞かせるためのエンジン音」を奏でる事が出来、「人の五感」を刺激する現代には珍しいエンジンが生まれました。
デザインとエンジンのコンセプト、バランスをとる事は当時の開発チームにとって一番難儀だったと思います。・・・すみません、僕はマフラー交換しちゃいましたが。
【W650 その乗り心地】
ポジションは、アップハンドルという事もあり、楽な姿勢で運転できます。サスも柔らかめで運転時の疲れも少ない気がします。前期型シートは形状のせいでか「長距離でお尻が痛い」と意見があったようです。僕は、すぐにシートをカスタムした為に感じていませんが。僕は身長が183㎝あるため、ステップ位置がもう少し長めであれば最高です。
取り回しは、約200㎏の中型プラスαという感じの車体ですので、比較的に取り回しがしやすいと思います。ハーレーの大型モデルだと300㎞超えてますし。
【W650 その系譜】
W650のルーツはこんな感じ。
※系譜の参考資料として僕の宝物のひとつ、「WORLD MC GUIDE KAWASAKI-Ⅰ(ネコ・パブリッシング刊)」より出典しています。
◆メグロ スタミナK1(1960年)
エンジン:空冷4ストローク並列2気筒 OHV 2バルブ
総排気量:496.75cm3
最高出力 :33ps/6,000rpm
最大トルク :4.1kgf-m/6,000rpm
◆W1(1966年)
エンジン種類:空冷4ストローク並列2気筒 OHV 2バルブ
総排気量: 624cm3
最高出力: 47ps/6,500rpm
最大トルク: 5.4kgf・m/5,500rpm
◆W1SA(1971年)
エンジン: 空冷4ストローク並列2気筒 OHV 2バルブ
総排気量: 624cm3
最高出力: 53ps/7,000rpm
最大トルク: 5.7kgf・m/5,500rpm
◆W3 [650RS] (1973年)
エンジン:空冷4ストローク並列2気筒 OHV 2バルブ
総排気量: 624cm3
最高出力: 53ps/7,000rpm
最大トルク: 5.7kgf・m/5,500rpm
W1からW3の途中、マイナーですがW2の存在もありました。
メグロ以前は、英国BSAまで遡る系譜となります。
よく欧米人がW650に関して「なんで本家BSAやト●イアンフに乗らないのか?」的な事を言うらしいのですが、そんな事を言い始めると最初にバイクが発明された祖先の話までになりナンセンス。
僕はカワサキが好きでW650が好きなので「純国産としてのメグロ」が初代という事で考えています。賛否あると思いますが(笑)。
◆W650 まとめ
W3が1974年に生産を終えた後、四半世紀を超えてW650が生まれました。当初はカワサキという会社自体も「売れるバイクではない」と考えていたそうです。一定層のみに訴求するモデル。でもそれは大きな間違いで、結果は「ネオ・クラシックブーム」の影響を及ぼすヒットとなりました。
規制で絶版となった車両ですが、現在でも中古車はリーズナブルな金額で取引され、タマ数も多いと思います。一部の方からは「大型バイク入門」的な位置づけを言われましたが、中上級者でも楽しめるはず。スピードを求めるのではなく、目的地までゆったりとエンジンの鼓動やメッキパーツに反射する景色を楽しみながらライディングする事がW650らしさです。
気になった方は一度乗ってみてください。
バイクの必要最低限が揃っている事を感じられるはずです。